副業を始めたサラリーマンの多くが、最初に悩むのが「確定申告って必要?」「20万円ルールって本当なの?」という疑問です。特に会社に副業がバレないか心配な人や、節税の仕組みをうまく使いたい人にとっては避けて通れないテーマです。
※ “20万円ルール”は収入ではなく所得(収入-必要経費)が基準です。
この記事を読むと、
- 所得税と住民税で異なる「20万円ルール」の正しい理解
- 申告が必要になる具体的なケース
- 青色申告・白色申告の選び方
- ふるさと納税やiDeCoを組み合わせた節税の方法
が分かります。
結論を先に言うと、「20万円以下なら必ず申告不要」というわけではありません。所得税では20万円ルールが適用されますが、住民税や控除の利用状況によっては20万円以下でも申告が必要になるケースがあります。
副業サラリーマンこそ、制度の仕組みを知って正しく申告することで、会社に余計な心配をかけずに、節税のチャンスも広げられます。
出典:国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」(最終閲覧:2025-09-18)
出典:国税庁「確定申告が必要な人」(最終閲覧:2025-09-18)
副業サラリーマンと「20万円ルール」の基本(所得税と住民税の違い)
「副業収入が20万円以下なら確定申告は不要」――これはよく聞く話ですが、実は半分正解で半分誤解です。
- 所得税:20万円以下なら申告不要の特例あり
- 住民税:金額にかかわらず申告が必要
つまり、「20万円ルール」が適用されるのは所得税だけであり、住民税にはこのルールが存在しません。
ここを勘違いして「住民税も申告不要」と思い込むと、後で会社に副業が知られるリスクや、追徴課税につながる可能性があります。
まずは 「所得税には適用されるが住民税には適用されない」 という仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
項目 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
20万円ルール | 適用あり (20万円以下なら申告不要の例あり) | 適用なし (少額でも申告必要) |
判定基準 | 所得(収入-経費)で判断 | 収入の有無で判断 |
注意点 | 医療費控除や住宅ローン控除 を使う場合は申告必要 | 普通徴収を選ばないと 会社にバレやすい |
所得税の場合:副業の所得(=収入−経費)が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要。
住民税の場合:少額でも申告が必要。20万円ルールは存在しない。
ここで重要なのは「収入」と「所得」の違いです。たとえば副業収入が30万円あっても、経費が15万円かかっていれば所得は15万円。所得が20万円を下回れば、所得税については申告不要となります。ただし住民税は別途申告が必要なので注意が必要です。
➡つまり、「20万円ルール=何も申告しなくていい」という認識は間違い。まずは制度の正体を正しく理解することが大切です。
20万円ルールで確定申告が必要になるケース
副業で「確定申告が必要になるかどうか」は、単に 「副業収入が20万円を超えるか」だけでは判断できません。
以下のようなケースでは、20万円以下であっても申告が必要になるため注意が必要です。
- 所得税:副業所得が20万円を超える場合は必ず申告が必要
- 控除を利用する場合:医療費控除・住宅ローン控除・ふるさと納税を使うと20万円以下でも申告が必要
- 住民税:金額に関わらず申告が必要(住民税には「20万円ルール」が存在しない)
このように「20万円ルール=申告不要」と思い込むと、申告漏れのリスクにつながります。表で具体的に整理してみましょう。
ケース | 所得税 | 住民税 | ポイント |
---|---|---|---|
所得が20万円超 | 必要 | 必要 | 最も分かりやすいケース。 必ず確定申告する。 |
所得20万円以下でも 控除を使う場合 | 必要 | 必要 | 医療費控除・住宅ローン控除・ ふるさと納税などを利用する場合。 |
所得20万円以下・控除なし | 不要 | 必要 | 所得税は不要だが、 住民税の申告は必須。 |

注記
ふるさと納税のワンストップ特例を使い、かつ他に確定申告が必要な理由がない場合は、上記の「Yes」に該当しても所得税の確定申告は不要です(住民税の申告は自治体ルールに従って対応)。
所得が20万円を超えると申告が必要
副業の所得が20万円を超えると、所得税・住民税の両方で必ず確定申告が必要になります。
特に会社員の副業は、住民税から会社に知られるリスクがあるため、申告を怠ると追徴課税や会社に通知がいく可能性もあります。必ず正しく申告しておきましょう。
20万円以下でも確定申告が必要なケース
副業所得が20万円以下でも、医療費控除・ふるさと納税・住宅ローン控除を利用する場合は確定申告が必要です。
これらの控除を使うことで所得税や住民税が還付されるため、むしろ申告した方が得をするケースが多いのが特徴です。
20万円以下で申告不要となるケース
副業の所得が20万円以下で、医療費控除や住宅ローン控除などを利用しない場合は、所得税の確定申告は不要です。
ただし注意が必要なのは住民税です。副業収入がある場合は、必ず住民税の申告をしなければならないため「完全に何もしなくていい」というわけではありません。
特に会社に副業が知られたくない人は、住民税を「普通徴収」にする手続きを取ることがポイントです。これにより、会社の給与天引きに混ざらず自分で納付できるため、副業がバレるリスクを下げられます。
青色申告と白色申告の違い(副業向け)
副業をしている会社員でも、確定申告の際には 「青色申告」か「白色申告」 を選ぶことができます。
この2つの制度には次のような違いがあります。
- 青色申告:帳簿付けなどの手間は増えるが、最大65万円の特別控除や赤字の繰越ができる
- 白色申告:手続きが簡単だが、節税効果はほとんどない
副業を本格的に続けるなら青色申告のメリットは大きく、反対に少額の副業なら白色申告で十分な場合もあります。
次の表で違いを整理してみましょう。
項目 | 青色申告 | 白色申告 |
---|---|---|
控除額 | 最大65万円 | なし |
帳簿の複雑さ | 複式簿記が必要 | 単式簿記でOK |
節税効果 | 高い(赤字繰越・家事按分可) | 小さい(節税効果ほぼなし) |
向いている人 | 副業収入が大きくなった人 | 副業を始めたばかりの人 |
青色申告のメリット・デメリットまとめ
副業サラリーマンにとって、青色申告は帳簿付けを正確に行うことで税制上のメリットが得られる申告方法です。
65万円または10万円の特別控除を受けられるほか、赤字を翌年以降に繰り越せる点も魅力です。ただし、複式簿記による記帳や会計ソフトの導入が前提となるため、事務作業の負担は増えます。
メリット
- 最大65万円の特別控除を利用できる
- 赤字を翌年以降に繰り越せる
- 通信費や家賃の一部を経費にできる(家事按分)
- 白色申告に比べて節税効果が大きい
デメリット
- 複式簿記が必要で手間がかかる
- 会計ソフトなどの導入コストが発生する
- 記帳や申告に慣れるまで負担が大きい
白色申告のメリット・デメリット
副業を始めたばかりのサラリーマンの場合、白色申告は帳簿付けの要件が緩く、シンプルに申告できる方法です。副業を始めたばかりで収入が少ない段階では、白色申告でも十分対応できます。しかし、青色申告にある控除や赤字繰越の特典が使えないため、将来的に収入が増えると節税効果は限定的です。
メリット
- 単式簿記で済み、手間が少ない
- 初心者でも取り組みやすい
- 副業収入が少ないうちは十分対応可能
デメリット
- 青色申告の特典(控除・赤字繰越)が使えない
- 節税効果が小さい
- 副業収入が増えると不利になりやすい
ふるさと納税とiDeCoを組み合わせた節税方法
節税効果が高まる組み合わせ
副業収入がある場合、ふるさと納税やiDeCoを組み合わせることで税負担を効率的に減らせます。具体的には以下のような効果があります。
- ふるさと納税
→ 住民税からの控除が受けられる。副業収入が増えると住民税も上がるため、効果が大きくなりやすい。 - iDeCo(個人型確定拠出年金)
→ 掛金が全額所得控除になる。副業所得が増えた分、節税のインパクトも大きい。 - 確定申告で両方を併用
→ 所得税+住民税の双方で節税効果を最大化できる。
例えば、副業所得が30万円の場合でも、ふるさと納税とiDeCoを併用すれば数千円から1万円以上の節税につながるケースもあります。
注意が必要な落とし穴
一方で、以下のような注意点もあります。
- 控除の上限を超えると、期待した節税効果が得られない
- ふるさと納税は家族構成や収入額によって上限が変わる
- iDeCoは60歳まで原則引き出せず、流動性が低い
- 節税目的だけで使うと「お金が動かせない」というリスクがある
したがって「節税できるから無条件に使う」のではなく、自分のライフプランに合った形で選ぶことが大切です。
副業初心者が確定申告をラクにする方法
会計ソフトを使うメリット
副業の確定申告は、会計ソフトを活用することで大幅に手間が減ります。レシートをスマホで撮影して自動仕訳できる機能や、e-Taxと連携してオンライン申告できる機能が充実しています。特に初めて申告する場合、ミスを防ぎつつ効率的に処理できるため安心です。
代表的なソフトには以下があります。
- freee:初心者でも使いやすく、自動仕訳が充実
- マネーフォワードクラウド:家計簿アプリとの連携が便利
- 弥生会計オンライン:サポートが手厚く、長期利用者が多い
実際、国税庁も電子申告を推奨しており、利用者数は年々増えています。紙で帳簿を作成する時代は終わりつつあり、会計ソフトの活用が副業サラリーマンの標準になっています。
e-Taxを使った確定申告の方法
副業サラリーマンが効率的に申告するなら、国税庁のe-Taxを使えば自宅からインターネットで完結できます。マイナンバーカードやICカードリーダー、またはスマホアプリを使って本人確認が可能です。紙での提出に比べて処理が早く、還付金も早めに振り込まれるのが大きなメリットです。
e-Taxを使うメリットは以下の通りです。
- 効率的:仕事の合間にネットで申告可能
- 迅速:還付金の振込が早い
- 継続利用:過去の申告データを引き継げるので翌年以降も簡単
副業サラリーマンが効率的に申告する手段として、e-Taxは最適といえます。
まとめ:副業サラリーマンが押さえるべき「20万円ルール」のポイント
副業の確定申告における「20万円ルール」は、誤解されやすいポイントです。最後に重要な点を整理します。
- 所得税:副業所得が20万円以下なら確定申告は不要
- 住民税:金額にかかわらず申告が必要(20万円ルールは適用されない)
- 控除の利用:医療費控除や住宅ローン控除を受けるなら20万円以下でも申告が必要
- 青色申告・白色申告:節税効果を狙うなら青色、簡単に済ませたいなら白色
- 副業と会社への影響:住民税の普通徴収を選ぶことが重要
つまり「20万円ルール」とは所得税に限定された特例であり、住民税や控除の有無を考慮しないと申告漏れにつながるのです。
副業サラリーマンは、この違いを理解して正しく申告することで、余計なリスクを避けつつ節税のチャンスを広げられます。